東北工業大学 工学部情報通信工学科 中川研究室


ラプラス変換

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例題
インパルス応答
インダクタンスL=10μH のコイル、抵抗値 R=500Ω の抵抗、電気容量 C=250pF のコンデンサ を直列につないだ回路のインパルス応答を求めよ



1.方程式をたてる
抵抗の両端の電圧 R i(t), コイルの両端の電圧 L di(t)/dt, コンデンサ の両端の電圧 q(t)/C, 合計が 電源の起電力E(t)と等しくなるので、

L di(t)/dt + R i(t) + q(t)/C = E(t)


2.両辺をラプラス変換する
L( i ' ) + R( i ) + (1/C)( q ) = ( E )


3.ラプラス変換の微分法則 を使う
Ls( i ) + R( i ) + (1/C)( q ) = ( E ) + Li(0)
微分法則
( y’ ) =
- y(0) + s ( y )

4.電荷q(t)と電流i(t)の関係を考える
dq(t)/dt = i(t)  
両辺をラプラス変換
( q ') = ( i )  
微分法則を使い
-q(0) + s( q ) = ( i )  
     ( q ) ={ ( i ) + q(0) }/s
微分法則
( y’ ) =
- y(0) + s ( y )

5.( i )だけの式にする
( q ) の式を元の方程式に代入して
Ls( i ) + R( i ) + (1/Cs)( i ) + q(0)/Cs
         = ( E ) + Li(0)
( i )の出てくる項を左辺にまとめて
( Ls + R + 1/Cs ) ( i )
         = ( E ) + Li(0) - q(0)/Cs
( Ls + R + 1/Cs )は
「特性関数」
または
「インピーダンス」

6.右辺を計算する
インパルス応答」となっているので
i(0) = 0, q(0)=0, E(t)= δ(t)
( δ(t) )=1 なので
( Ls + R + 1/Cs ) ( i ) = 1
単位インパルス
単位関数
インパルス応答
単位応答

7.左辺を( y ) = の形にして整理
( Ls + R + 1/Cs ) ( i ) = 1

変形して
( Ls2 + Rs + 1/C )/s ( i ) = 1

両辺にs/( Ls2 + Rs + 1/C )をかけ
( i ) = s/( Ls2 + Rs + 1/C )

変形して
( i ) = s/L{ s2 + (R/L)s + (1/LC) }

左の式は
( i ) = ( Ls + R + 1/Cs )-1
ともかけるね。
この( Ls + R + 1/Cs )-1
「伝達関数」と
いいます

今、 i は
インパルス応答だから
( インパルス応答 )=
      ( 伝達関数 )

  ここで初めて数値を代入
L = 10μH = 10-5H,
R = 5×102Ω,
C = 250pF = 2.5×10-10F なので
R/L = 5×107
1/LC = 4×1014 です。
よって
( i ) = (1/L) ・ s/{ s2 + (R/L)s + (1/LC) }
      = 105・ s/{ s2 + 5×107 s + 4×1014 }
これは
( i ) = 105s/( s + 107 )( s + 4×107 )
のように因数分解できます。
( i ) = 105s・1/( s + 107 )( s + 4×107 )
部分分数分解して
( i ) = 105 s/ ( 3×107 )・
          { 1/(s+107) - 1/(s+4×107) }
sを前半と後半に分けて
( i ) = 105 / ( 3×107 )・
          { s/(s+107) - s/(s+4×107) }
分子sをs+107-107のように考えて
( i ) = 105/( 3×107 )・
      { 1 - 107/(s+107) - 1 + 4×107/(s+4×107) }
( i ) = 105/3 ・
      { - 1/(s+107) + 4/(s+4×107) }

8.右辺が何のラプラス変換か考える
( i ) = 105/3・{ ( 4 exp( -4×107 t ))
         - ( exp( -107 t ) )}

9.両辺の( )を同時にはずす
i = 105/3・{ 4 exp( -4×107 t ) - exp( -107 t ) )}

1/(s-A)(s-B)は
{ 1/(s-A) - 1/(s-B) }/( )
の形に直せます
これを
部分分数分解
いいます
検算しましょう
出来た答えを微分して元の方程式に代入し、成り立つかどうか確かめよう。
初期条件も代入して確かめよう。ただし、 インパルス応答のときは t=0 を代入して成り立たないこともあります。


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