東北工業大学 通信工学科 中川研究室


中川朋子 学会・シンポジウム 発表論文要旨

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GEOTAIL 16Hz MGFデータによる太陽風中の磁場不連続の厚さの検討、
中川朋子、國分 征
1999年地球惑星科学関連学会合同大会、 東京、代々木オリンピック記念青少年総合センター、 1999年6月8日.

 スピン衛星による太陽風磁場の観測値は、その一次処理過程で 衛星のスピン周期ないしその整数倍の時間精度となることが多い。 そのため、太陽風中の磁場不連続(discontinuity)の厚さを調べよう としても、磁場変化が急激で、データの間隔に近い時間で終わって しまい、厚さの情報を正確に知ることが困難であった。今回、ジオ テイル衛星の16HzサンプリングのMGFデータを使うことによって、 磁場不連続の厚さと磁場変化の途中経過を調べることができた。 一般には、磁力計のオフセットや衛星本体に由来する磁場の差し 引きなどの一次処理を経ていないデータを使用することは危険で あるが、ジオテイルの磁場観測ではこうした人工の磁場成分が小 さく、また、太陽風中では観測レンジの切り替えが少なかったこ ともあり、良質のデータが得られている。

 Tangential discontinuityの多かった1994年11月9日について、 3秒値データ中で見つけた磁場不連続を16Hzデータで見直すと、 不連続層の厚さはおよそ2400-5600km(遷移持間6-14秒、太陽風速 400km/s)と、予想よりかなり緩やかであった。このときラーマー 半径はイオンで約40km,電子で約1kmであった。より薄い不連続を 探そうとすると、磁場変化の小さなものに限られる傾向がある。 約8秒で下流側から上流側の状態へ遷移する不連続では、下流側 でずっと見えていた約2Hzの波が遷移中の磁場変化に重畳し、上流 側で消える例が見られた。

謝辞:本研究では、(故)山本達人氏と九州大学の河野英昭氏の 整備した16Hz磁場データ処理ソフトを使わせて頂いた。宇宙研の 篠原郁氏にはデータ取得に際してお世話頂いた。

On the thickness of interplanetary magnetic discontinuities: GEOTAIL high-time resolution MGF data
T.Nakagawa, and S.Kokubun

Thickness of magnetic discontinuities was investigated by using high-time resolution magnetic field data obtained from GEOTAIL/MGF on November 9, 1994. Magnetic discontinuities in 16Hz magnetic field data were 2400-5600 km in thickness. The gyroradii were 40 km for ions and 1 km for electrons. Thinner discontinuities had smaller jumps in magnetic field. One of the discontinuities had magnetic fluctuations whose frequency was about 2Hz on one side. The wave amplitude diminished as the spacecraft went through the transition layer, and completely disappeared on the other side of the discontinuity.

衛星電位と周辺プラズマの観測から求めた磁気圏中のGEOTAIL衛星の 光電子電流密度、
石井琢、中川朋子、鶴田浩一郎、早川基、向井利典、
1999年地球惑星科学関連学会合同大会、 東京、代々木オリンピック記念青少年総合センター、 1999年6月11日.

のぞみ衛星によって観測された太陽風磁場、
中川朋子、松岡彩子、のぞみMGFチーム
第106回地球電磁気・地球惑星圏学会、仙台、仙台市民会館、 1999年11月9日.

火星探査機のぞみは、2004年の火星軌道投入までは人工惑星として 惑星間空間を巡航することになる。この期間にいくつかの観測機器 が動作可能であるが、中でも磁場の観測が可能となれば、1日24時 間欠けること無く太陽風磁場をモニターできるものとしては我国初 の探査機となり、磁気圏物理、太陽風物理の両方にとって意義が大 きい。特に、探査機が地球から大きく離れることができるという点 は人工惑星の大きな強みであり、太陽表面から視線方向に対しほぼ 垂直に放出されたCMEを惑星間空間で実測できる可能性がある。

のぞみによる磁場観測にとって最も困難な点は、磁力計のマストが 未伸展であるということである。これは火星軌道投入時に探査機の 姿勢に影響を与えないためであるが、搭載各機器からの磁場干渉が データに混入するので惑星間空間磁場観測にとっては非常に不利な 条件である。しかしながら、打ち上げ前に電磁環境基準を満たす努 力がなされたことと、探査機の姿勢安定性が良いことに助けられ、 スピンに同期して変化する自然磁場約5nTを、スピン位相に無関係 な干渉成分(X成分で320nT)から分離することができた。スピン軸 方向のセンサオフセットと干渉成分はDavis-Smith法によって差し 引かれた。各機器のヒーターが自律的にON,OFFを繰り返すような場 合は干渉成分も変化してしまい、スピン軸方向成分の信号に影響が 現れるが、他成分の干渉磁場との相関を利用することでこの影響を かなり改善することができた。

こうして得られた惑星間空間磁場は、約8秒の時間分解能と、現在 1nT程度の磁場精度を持つ。強度5-10nTでアルキメデススパイラル に沿った方向が観測されており、太陽風磁場が正しく得られている ことが示された。探査機が地球に近い1998年9月8日から10月26日の 期間についてNSSDCAのOMNIwebのNear-Earth Heliosphere Data と 比較したところ、磁場強度、極性とも同様の変化をしていることが 確認された。

Interplanetary magnetic field observed by NOZOMI spacecraft
T. Nakagawa, A. Matsuoka, and NOZOMI/MGF Team

Interplanetary magnetic field data were obtained by NOZOMI spacecraft in its cruise phase before extension of the sensor mast. Field contamination from other subsystems were subtracted from the magnetometer output by using spin-modulation of the signal.  Davis-Smith method was used to estimate interference into the field component parallel to the spin axis. The magnetic field data thus obtained at about 1 AU during the period from September 8 to October 26, 1998, were consistent with the average solar wind magnetic field.

「のぞみ」磁場観測に基づく惑星間空間磁場の構造解析、
中川朋子、松岡彩子、のぞみMGFチーム
第8回科学衛星・宇宙観測シンポジウム、相模原、宇宙科学研究所、 2000年3月1日.

はじめに

火星探査機「のぞみ」は、2004年の火星軌道投入までは 人工惑星として惑星間空間を巡航することになる。 この期間にいくつかの観測機器が動作可能であるが、 中でも磁場や太陽風速、密度の観測が可能となれば、 1日24時間欠けること無く太陽風をモニターできる探査機としては 我国初となり、太陽風物理にとって意義が大きい。 特に、探査機が地球から大きく離れることができるという点は 人工惑星の大きな強みである。 地球近傍の衛星観測だけでは、太陽表面から放出されるCMEと 惑星間空間で観測される現象を対応させようとしても、 CME放出が視線方向であるため初速がわかりにくい。 地球から十分離れた位置に探査機があれば、 地球近傍の撮像観測と組み合わせることで、 太陽表面から視線方向に対しほぼ垂直に放出されたCMEを 惑星間空間で実測できる可能性がある。 また、打ち上げ後の約半年間の1998年後半は 比較的地球に近い位置(最大約140万km)にあり、 他の探査機とともに太陽風の多点観測を行う形となった。 GEOTAILを始めIMP8、ACE、WINDの探査機のほとんどが GSE座標のx方向に並んでいたのに対し、 「のぞみ」だけはこれらの探査機群からGSE座標のy方向に離れていたので、 現象の3次元構造解析に非常に有利である(図1)。 本研究では、火星探査機「のぞみ」の 惑星間空間巡航中の磁場観測を 他の探査機の観測と組み合わせることにより、 太陽風中の磁場構造を解析する。

図1 1998年10月19日の「のぞみ」及びACE,WIND,GEOTAILの軌道

磁場データ1次処理

 「のぞみ」による磁場観測にとって最も困難な点は、 磁力計のマストが未伸展であるということである。 これは火星軌道投入時に探査機の姿勢に影響を与えないためであるが、 搭載各機器からの磁場干渉がデータに混入するので 惑星間空間磁場観測にとっては非常に不利な条件である。  自然磁場と干渉成分の分離は、信号波形のスピン変調を使って行われる。 計測対象の自然磁場が「のぞみ」のスピン周期約8秒程度の間は ほぼ一定であると仮定すると、信号の振幅・位相・定数成分から、
・自然磁場
・スピン位相に無関係な干渉磁場、及びセンサオフセット
・スピン位相によって変化する干渉磁場(衛星を等価ダイポールと近似したもの)
を求めることができる。 打ち上げ前に電磁環境基準を満たす努力がなされたことと、 探査機の姿勢安定性が良いことに助けられ、 スピン軸に垂直な2成分については、 強さ約5nTの自然磁場を干渉成分(X成分で370nT、Y成分約100nT)から 分離することができた。 等価ダイポール成分は非常に小さくほとんど無視できる事がわかった。 干渉成分には各機器のヒーターのON,OFFによる周期的な変化が現れた。 格納状態の磁力計センサの最も近くにあるPIPE 3 Heaterに流れる電流が この変化に最も関与していることが判明している( 図2)。

 スピン軸方向のセンサオフセットと干渉成分は Davis-Smith法によって差し引くのが常であるが、 各機器のヒーターが自律的にON,OFFを繰り返すような場合は 干渉成分も変化してしまい、スピン軸方向(z成分)の信号波形に影響し、 このままではDavis-Smith法を使うことができない。 HKデータはサンプリングレートが低すぎるため、 各ヒーターのON,OFFのステータスを磁場のデータの処理に使うのは現実的でない。 そこで、z成分の波形の変化がx,y成分の干渉磁場と同期していることを利用し、 10分程度の期間ごとに両者の関係を統計的に求め、 z成分の干渉磁場の大きさをx,y成分の干渉磁場の関数として推定して z成分の波形から取り除き、波形をかなり改善することができた。 この後Davis-Smith法によってセンサオフセットを差し引き、磁場z成分を得た。

観測結果

こうして得られた惑星間空間磁場は、約8秒の時間分解能と、現在1nT程度の磁場精度を持つ。 図3は1998年9月から12月の間に得られた磁場を示したものである。座標はほぼGSE座標系である(厳密には「のぞみ」から見た太陽方向をR、地球の公転逆向きをT、R×TをN方向とするRTN系であるが、この期間衛星は地球の近くにあったためGSEとの差は0.5度以内である)。経度角φがほぼ-45度か135度の、アルキメデススパイラルに沿った方向が観測されており、太陽風磁場が正しく得られていることがわかる。これを地球近傍にいた他の探査機、例えばIMP8やACE等の観測と比べるとほぼ一致することがわかった。

図3 (上)ACEによって観測された磁場、(下)「のぞみ」によって観測された磁場

多点観測

 図1に見るとおり、1998年後期は、地球近傍にはGEOTAIL、地球から太陽方向に60万km付近の位置にWIND、150万km付近の位置にACEが、ほぼGSE-x軸上に並んで観測を行っていた。「のぞみ」はGSE座標のy方向に最大約140万km離れ、太陽風磁場の観測を行った。 図4は1998年10月19日に「のぞみ」とACEによって観測された、磁場強度約20nTを持つ磁場構造の例である。この例では、ACEと「のぞみ」でほぼ同じ磁場が 40分の時間差で観測され、140万km程度のスケールではほぼ一様定常な構造であることが確認された。x方向に103万km離れた位置で40分の時間差で観測されたことから、構造の伝搬速度は430km/sとなるが、これはACEによって観測された太陽風速407km/sと良く合っている。

 一方、この構造の直前の高密度の領域では2つの探査機で異なった波形の磁場が観測されている。このような違いから、構造の時間発展、あるいはy方向の空間変化を解析することができると期待される。

のぞみ衛星によって観測された太陽風磁場の構造解析
中川朋子、松岡彩子、のぞみMGFチーム
2000年地球惑星科学関連学会合同大会、 東京、代々木オリンピック記念青少年総合センター、 2000年6月27日.

 飛翔体観測に基づいて太陽風磁場の3次元構造を解析するためには、「観測された現象の空間的広がりが解らない」「時間変化と空間変化を区別できない」という一点観測の弱点を克服する必要がある。従来は、グローバルな構造についてはモデルを仮定する等の努力が行われてきたが、相互に適正な距離だけ離れた複数の探査機による多点観測が構造解析に最も有効なことは議論を待たない。  本研究では、火星探査機「のぞみ」の惑星間空間巡航中の磁場観測を他の探査機の観測と組み合わせることにより、太陽風中の磁場構造を解析する。「のぞみ」は磁力計のマストが未伸展ながら、継続的に磁場観測を行っており、1998年9月から12月の期間については約8秒値のデータが得られている。この期間中、地球近傍にはGEOTAIL、地球から太陽方向に60万km付近の位置にWIND、150万km付近の位置にACEが、ほぼGSE-x軸上に並んで観測を行っていた。「のぞみ」はGSE座標のy方向に最大約140万km離れ、太陽風磁場の観測を行った。1998年10月18日に観測された、約20nTのやや強い磁場強度を持つ構造の例では、ACEと「のぞみ」でほぼ同じ磁場が40分の時間差で観測され、140万km程度のスケールではほぼ一様定常な構造であることが確認された。一方、この構造の直前の高密度の領域では二つの探査機で異なった波形の磁場が観測された。

Analysis of interplanetary magnetic field structures observed by NOZOMI spacecraft
T. Nakagawa, A. Matsuoka, and NOZOMI/MGF Team

The interplanetary magnetic field observed by NOZOMI in late 1998 has been compared with those measured by GEOTAIL, WIND, and ACE. Typical separation between NOZOMI and other spacecraft was 1000000 km in y-direction of the GSE coordinate system in October, 1998. A low-beta magnetic structure which appeared on October 8, 1998, was identical over a distance of 1400000 km, while a high-beta part preceding it showed different appearances in magnetic field at separate spacecraft, suggesting that there were temporal variations, or that the scale length of the phenomenon was smaller than a few hundred Earth radii.

The thickness of Earth's bow shock obtained by GEOTAIL high time resolution MGF data,
E.Kurihara and T. Nakagawa,T
2000 Western Pacific Geophysics Meeting, Tokyo, 2000年6月28日.

Detection of sunward-propagating Alfven waves along IMF,
M.Yumura and T.Nakagawa,
2000 Western Pacific Geophysics Meeting, Tokyo, 2000年6月28日.

Multipoint observation of Interplanetary magnetic field structures by using NOZOMI spacecraft,
T. Nakagawa, A. Matsuoka, and NOZOMI/MGF team,
2000 Western Pacific Geophysics Meeting, Tokyo, 2000年6月29日.

NOZOMI observation of the interplanetary magnetic field in 1998,
T. Nakagawa, A. Matsuoka, and NOZOMI/MGF team, COSPAR Scientific assembly 2000, Warsaw, Poland,    2000年7月19日.

The insertion of NOZOMI spacecraft into interplanetary space, where other spacecraft were operating, added a new array of multipoint observation that extended up to 1.6 x10^6 km in y-direction of the GSE coordinate system. The coherency length of planar magnetic structures has been found to be less than 1.9 x 10^6 km in a direction tangential to the discontinuity surface. The region of low coherency seemed to coincide with region of high density plasma. An interplanetary magnetic flux rope which appeared on October 19, 1998, was identical over a distance of 1.9 x 10^6 km, while in a high-beta sheath preceding it, the magnetic field appeared differently at separate spacecraft.

地球から離れた経度における「のぞみ」太陽風磁場観測
中川朋子、松岡彩子、のぞみMGFチーム
第108回地球電磁気・地球惑星圏学会、東京、板橋区立文化会館、 2000年11月20日.

火星探査機「のぞみ」は、2004年の火星軌道投入までは人工惑星 として惑星間空間を巡航することになる。この期間にいくつかの観 測機器が動作可能であるが、中でも太陽風磁場や太陽風速、密度を、 1日24時間連続的にモニターできるようになったのは探査機として は我国初であり、太陽風物理にとって意義が大きい。また、探査機 が地球から大きく離れることができるという点は人工惑星の大きな 強みである。地球近傍の衛星観測だけでは、太陽表面から放出され るCMEと惑星間空間で観測される現象を対応させようとしても、 CME放出が視線方向であるため初速がわかりにくい。地球から十 分離れた位置に探査機があれば、地球近傍の撮像観測と組み合わせ ることで、太陽表面から視線方向に対しほぼ垂直に放出されたCM Eを惑星間空間で実測できる可能性がある。

 本研究では、「のぞみ」と地球が太陽から見てほぼ90度離れた 経度にあった1999年11月から12月の期間に観測された太陽 風磁場を解析し、「ようこう」やSOHOなどの太陽面現象の観測と比 較する。この期間は太陽風磁場のセクター構造は安定していて、 「のぞみ」が観測したものと良く似た磁場が地球近傍で観測されて いた。この時期「のぞみ」では太陽風速の観測の無い期間もあるが、 ACEなどの地球近傍の太陽風観測と組み合わせ、再現性の良い磁場 構造を目印として使うことにより、観測時刻の差から「のぞみ」の 位置での太陽風速度の推定も可能であることが解っている。今回は セクター境界で10月31日と11月26日に回帰的に見られた磁 場構造について報告する。

Observation of the interplanetary magnetic field by NOZOMI at a large heliospheric longitude from the Earth
T. Nakagawa, A. Matsuoka and NOZOMI/MGF Team

The interplanetary magnetic field was observed by NOZOMI spacecraft at a large separation of 90 degrees in heliospheric longitude from the Earth during the period from November, 1999, to December, 1999. The magnetic field observation was compared with the limb observation of the Sun from Yohkoh and SOHO.

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