東北工業大学 情報通信工学科 中川研究室


中川朋子 学会・シンポジウム発表論文要旨 

かぐや(SELENE)衛星搭載磁力計によって観測された磁場変動の伝搬方向と偏波
Minimum variance analysis applied to the magnetic field variations detected by Kaguya/LMAG around the Moon
中川朋子, 高橋太, 綱川秀夫,「かぐや」MAP-LMAG 班
Tomoko Nakagawa, Futoshi Takahashi, Hideo Tsunakawa, KAGUYA MAP-LMAG Team
日本地球惑星科学連合2009年大会、2009年5月18日.

かぐや(SELENE)衛星搭載の磁力計(LMAG) によって、月の周辺でさまざまな磁場変動が観測されている(Takahashi et al., 2009)。本研究では、上流の太陽風中のACE 衛星では観測されずに、かぐやLMAG でのみ観測された波について、 その伝搬方向と変動方向の特性をminimum variance method を用いて調べた。2008 年3 月8 日の12 時から22 時にかけ て、月の日照側の磁気異常の周辺で観測された約100 秒周期の波の伝播方向は、その場の磁場方向とは数十度かけ離れ ており、むしろその場の月面の法線方向に沿っているという傾向があった。これらの変動の多くは円偏波を示し、その回 転方向はその場の磁場に対してすべて右回りであった。背景の磁場方向は毎回異なっているのに、約2時間ごとのかぐ やの周回のたびに月面に垂直な伝搬方向がみられることから、これらの波が月の磁気異常に関連して発生していること、 また、昼側およびターミネータでのみ観測されていることから、太陽風との相互作用が重要なことがわかる。一方、昼 側で観測される、より周波数の高い波(0.1Hz 以上)については、伝搬方向はほぼ磁力線に沿っていることがわかった。
参考文献
Takahasi et al., (2009), On magnetic field modulation associated with interaction between the solar wind and lunar magnetic anomalies observed by KAGUYA (SELENE), JPGU Meeting 2009.

Minimum variance method is applied to the magnetic field variation around the Moon detected by Kaguya/LMAG. The propagation direction of 10mHz variations detected in the vicinity of magnetic anomalies was nearly perpendicular to the surface to the Moon, independent of the direction of the local magnetic field. The field variation showed right-handed circular polarization. On the other hand, the propagation direction of higher frequency variations on the dayside of the Moon was nearly parallel to the background magnetic field.

かぐや(SELENE)衛星によって月の昼側で観測されたホイッスラー波
Non-monochromatic whistler waves detected by Kaguya on the dayside surface of the moon
中川朋子, 高橋太, 綱川秀夫,「かぐや」MAP-LMAG 班
Tomoko Nakagawa, Futoshi Takahashi, Hideo Tsunakawa, KAGUYA MAP-LMAG Team
第126回地球電磁気・地球惑星圏学会, 金沢, 金沢大学, 2009年9月28日.

地球前面の衝撃波や月ウェイク境界、月固有磁場上空の強磁場などに関連して、狭い周波数帯のホイッスラー波が太陽風を遡ってくる現象が過去に報告されているが、月が太陽風にさらされている期間中、特定のピーク周波数を持たない0.03 - 5 Hzの周波数帯の磁場変動が月探査衛星「かぐや」搭載MAP-PACE/LMAG磁力計によって観測された。この周波数帯はイオンサイクロトロン周波数よりも高い。この磁場変動は、月面の固有磁場とはほとんど無関係に月の昼間側上空100kmの高度でほぼ常に観測され、さらにターミネータよりやや夜側に回り込んだところ(天頂角123度以内)でも観測されている。真夜中側では観測されていない。各成分に変動があるだけでなく磁場強度にも変動が見られ、圧縮成分があることが分かる。昼側で常に観測されること、および観測された周波数から、月面で反射したプロトンが励起したホイッスラー波の可能性が考えられる。この波の観測範囲はSaito et al. (2008)による反射プロトンの観測範囲と重なっているが、プロトンの検出範囲よりやや広かった。これは反射プロトンがサイクロトロン運動によって到達する範囲と合うようである。反射プロトンは様々な方向へ散乱されるが、太陽風プラズマの系から見て偏ったピッチ角分布となると考えられ、これが一様な分布になろうとする際、波数ベクトルが太陽風の流れの方向からずれている波のほうが励起されやすく、かつ、特定のピーク周波数が無いことも説明しやすい。

Non-monochromatic fluctuations of the magnetic field over the frequency range of 0.03 - 5 Hz were detected by Kaguya at an altitude of 100 km above the lunar surface. The fluctuations were almost always observed on the solar side of the moon, irrespective of the local lunar crustal field. They were also detected just nightside of the terminator (SZA < 123 degree), but absent around the center of the wake. The level of the fluctuation enhanced over the wide range from 0.03 to 5Hz (occasionally 10Hz), with no clear peak frequency. The fluctuations had the compressional component, and the polarization was not clear. The fluctuations were supposed to be generated through cyclotron resonance of the whistler waves with the protons reflected by the lunar surface. The reflected protons scatter into various directions, often making large angles with respect to the solar wind flow. They can give their energy to the waves effectively in the cases where the propagation direction of the whistler wave largely deviates from the solar wind flow. The deviation of the propagation direction accounts for the absence of the polarity reversal and no sharp cutoff in the spectrum.

かぐや(SELENE)衛星搭載磁力計によって観測された100秒周期の磁場変動の発生特性
Occurrence property of the 100-second magnetic field variations detected by Kaguya/LMAG around the Moon in the solar wind
中川朋子, 中山 研仁, 高橋太, 綱川秀夫,「かぐや」MAP-LMAG 班
Tomoko Nakagawa, Akihito Nakayama, Futoshi Takahashi, Hideo Tsunakawa, KAGUYA MAP-LMAG Team
第126回地球電磁気・地球惑星圏学会, 金沢, 金沢大学, 2009年9月28日.

月が太陽風中にあるとき、月の昼間側ないし昼夜境界付近で、約100 秒周期の磁場変動が「かぐや」衛星搭載の磁力計(MAP-LMAG) によってしばしば観測されている(Takahashi et al., 2009)。この波は、ちょうど地球のBow Shock前面で反射されたイオン励起するupstream wave と同じように、月によって反射されたプロトンが太陽風中のMHD波とサイクロトロン共鳴したものと考えられる。プロトンの反射には月面そのものによる散乱(Saito et al., 2008)と、月の固有磁場と太陽風磁場の相互作用で生じると言われるショック状の構造Lunar External Magnetic Enhancement(LEME, Halekas et al., 2006)による反射の2つの可能性が考えられる。そのいずれが重要かを調べるため、「かぐや」MAP-LMAGによって観測された磁場データ(1秒平均値)を300秒ごとにフーリエ変換し、100秒周期の成分のパワーを月面上にマップとして示してみた。その結果、 固有磁場の強いところに集中していることが示された。つまり、この100秒周期の波は、月の固有磁場によって反射されたプロトンが励起したものと考えられる。[1]
参考文献
Takahasi et al., (2009), JPGU Meeting P144-P018.
Saito et al., (2008), EPS 60, 375-385.
Halekas et al., (2006), GRL 33, L08106, doi:10.1029/2006GL025938.
訂正:
[1]予稿集に「固有磁場との関連を示すような特定の位置への集中は見られなかった。」と記載しましたが、 その後、固有磁場の強いところに集中していることが判明しています。

Kaguya/LMAG often detected low-frequency magnetic variation of 100-sec periods when the moon is in the solar wind. The low-frequency waves are supposed to be generated by the protons reflected by the moon through cyclotron resonance with the MHD waves in the solar wind. To know the occurrence property, a map of the power of 100-sec component was produced. There found concentration of the 100 sec component on intense local field.[2]
[2] (revised)

「かぐや」衛星によって観測された月周回軌道における1-10Hzの磁場変動
Magnetic fluctuations of 1-10 Hz observed by Kaguya/LMAG on its orbit 100km above the terminator of the moon
中川朋子, 高橋太, 綱川秀夫, 渋谷 秀敏, 清水 久芳, 松島 政貴  
Tomoko Nakagawa, Futoshi Takahashi, Hideo Tsunakawa, Hidetoshi Shibuya,Hisayoshi Shimizu, Masaki Matsushima
日本地球惑星科学連合2010年大会、2010年5月27日.

月には地球のような大規模な固有磁場が無いため、太陽風粒子が直接月面に衝突してその大部分が 吸収され、月の下流には太陽風プラズマの無い領域「ウェイク」が形成される。従来は、この「ウ ェイク」が太陽風と月の主な相互作用と考えられてきた。かつてGEOTAILやWIND衛星によって 月の上流で観測された太陽風をさかのぼるwhistler waveもウェイク境界の電場による電子反射が 原因となって励起されると考えられた。
しかし2007年以来の「かぐや」衛星の観測によって、月面に達した太陽風粒子の0.1ないし1%が 反射されることが示され、月と太陽風の相互作用が見直されている。月面ないし磁気異常による反 射粒子は月周辺の磁場に擾乱を与えている。特に100秒程度の周期の低周波の波と、1 - 10 Hz程 度のやや高周波の波が特徴的である。これはちょうど地球前面衝撃波で反射される太陽風プロトン による2種類の波とよく似ている。前者はMHD波、後者はwhistler wave と考えられる。
本講演では、このうち周波数の高い方の磁場変動に焦点を絞り、2008年1月1日から31日までの 期間に月面上100km高度で「かぐや」衛星によって観測された磁場変動(サンプリング周波数32 Hz)を32秒ずつフーリエ変換し、1 - 10Hz の磁場変動の発生特性を調べた。この期間中の「かぐ や」衛星の軌道はほぼターミネータ上(昼夜境界)を通る極軌道であった。観測される磁場擾乱は、 次の3つの要因 (1) 地球磁気圏に対する月の位置(太陽風中か、シース内か、ローブ内か)、(2) 月 の昼夜に対する位置 (昼側か、夜側か、ターミネータ上か)、(3) 月の磁気異常に対する位置、の組 み合わせによって様子が変わるが、軌道変化の時間スケールが(1)は1か月で1周、(2)は2時間で 1周、(3)は緯度方向には2時間、経度方向には約半月で1周、と異なるので、1か月分のスペクト ルを連続的に見ることでそれぞれの要因を切り分けることができる。(実際はこれに太陽風の条件が 要因に加わる。)ローブ中では磁場擾乱は非常に少なく(時折スパイク状のスペクトルが見られるこ とがある)、逆にシース中は元々プラズマが乱れた状態にあるため「かぐや」でも磁場変動強度が高 い。
月が太陽風中にある時、最も強い磁場変動は経度160度緯度-30度付近、および経度-160度緯度- 30度付近の磁気異常の上空で観測された。0.03-10Hzにかけての連続的なスペクトルが20-30分に わたって継続し、2時間後の次の周回でも再現することが多い(例:1月1-2日、14-15日)。同じ軌 道でも、これらの磁気異常が月の陰(wake中)となって太陽風が当たらない時にはそのような磁 場変動は全く観測されていない(例:1月27-29日)。他の磁気異常上空通過時について見ると、継続 時間が5分程度と短い場合や、数分間隔で3回連続して連続的なスペクトルが観測されることもあ る。これらは磁気異常の形状を反映しているようである。
1Hz付近に周波数幅0.5Hz程度の単色のwhistler waveが受かることもある。単色のwhistler  waveが磁気異常上空に多いことはLunar Prospector 衛星でも既に報告されているが、ターミネー タに沿った軌道上では、磁気異常にかかわらず長い時間単色のwhistler waveが現れ続けることも あった(例:1月1日、14日、30日)。単色というにはバンド幅の広い4-7Hzに数分間隔で繰り返し擾 乱が現れる例(1月4日)もある。それぞれの発生機構に違いがあるかどうかはまだ未解明である。

かぐや衛星によって月磁気異常上空で観測される100秒周期磁場変動発生時の太陽風条件
Solar wind condition of 100-second magnetic field variations observed by Kaguya/LMAG above the lunar magnetic anomaly
中山 研仁, 中川 朋子, 高橋 太, 綱川 秀夫, 渋谷 秀敏, 清水 久芳, 松島 政貴
Akihito Nakayama, Tomoko Nakagawa, Futoshi Takahashi, Hideo Tsunakawa, Hidetoshi Shibuya, Hisayoshi Shimizu, Masaki Matsushima
日本地球惑星科学連合2010年大会、2010年5月27日.

月が太陽風中にあるとき、月の昼間側や昼夜境界付近で約100秒周期の大振幅磁場変動が観測さ れることが「かぐや」衛星搭載磁力計(LMAG)によって分かった(Takahashi et al.,2009)。この磁 場変動は、上流の太陽風にあるACE衛星では観測されないため、元々の太陽風磁場にはないこと がわかる。
この波は、地球のBow Shockで反射されたイオンが励起するupstream waveと同じように、月で 反射されたプロトンが太陽風中のMHD波とサイクロトロン共鳴したものと考えられる。プロト ンの反射には、(1)月面そのものによる散乱(Saito et al., 2008)、(2)月の固有磁場による反射 (Halekas et al., 2006)の2つの可能性が考えられるが、100秒周期の波のパワーを月面上にマップ したところ、月の固有磁場の強いFar Sideの緯度-10度から-50度、経度150度から200度に集中し ていたので、100秒周期の波は月の固有磁場によって反射されたイオンが励起していると考えら れる。
月の固有磁場との関係がわかったので、次に太陽風側の条件を調べるため、約150万km上流で太 陽風を測っているACE衛星の太陽風の密度、速度と100秒周期の磁場変動のパワーを比べた。使 用データはLMAGによって2007年12月から2008年11月にかけて観測された100km高度磁場デー タ(1秒平均値)である。これを300秒ずつフーリエ変換し、100秒周期の磁場変動のパワーを得 た。ACEのデータはACEとかぐやの間の距離(X方向)を太陽風速のX成分Vxで割った時間だけず らした。
期間中、かぐや衛星が月の磁気異常(ME座標で経度150度から180度)の上空を通過した全28日の うち、特に100秒周期の磁場変動のパワーが強かった日5例について太陽風条件を調べると、4例 についてプロトン密度が20[cm-3]を超えていた。これは、通常の太陽風密度5[cm-3]と比べ非常に 高い。また、密度の増減に伴って、磁場変動の強度も似た変化をしていた。残りの1例は、プロ トン密度が5個[cm-3]程度であったが、1日を通して太陽風速度が600[km/s]前後あった。これよ り、太陽風速度だけでなく密度と速度の積、または密度と速度の2乗の積が100秒周期の波の発 生をコントロールしていることが示唆される。月面の固有磁場に当たるプロトンが多いと反射す るプロトンも増加するため、100秒周期の波のパワーも似た変化をしたと考えられる。これは月 磁気異常によるプロトンの反射によって100秒周期の波が発生するという考えと一致している。

Magnetic fluctuations produced by the solar-wind interaction with the Moon observed by Kaguya spacecraft
Nakagawa, T., F. Takahashi, H. Tsunakawa, A. Nakayama, H. Shibuya, H. Shimizu, M. Matsushima,
COSPAR Scientific Assembly 2010, B01-0060-10, Bremen, Germany, 2010年7月23日.

Recent lunar observations have renewed the understanding of the interaction between the solar wind and the moon. In the classical view, the non-conducting surface of the moon was thought to absorb all the incident solar wind particles, creating the lunar wake downstream of the moon, since the moon does not have the global magnetic field like the Earth. In accordance with recent Kaguya’s discovery of solar wind protons reflected by the lunar surface and by the local crustal magnetic field, fluctuations of the solar wind magnetic field were found around the moon. The solar wind magnetic fluctuations around the moon are characterized with two major frequency ranges, 0.01 Hz and 1-10 Hz, like those associated with the Earth’s bow shock.

The former waves with typical periods of 100 seconds are supposed to be generated through the cyclotron resonance of the reflected protons with the solar wind magneto-hydrodynamic (MHD) waves. The power of the waves enhanced above the intense crustal fields (magnetic anomalies). It is also found that the power enhanced as the proton density of the incident solar wind increased, supporting that the waves were generated by the reflected solar wind protons. Differently from those observed upstream of the Earth’s bow shock, the 100-sec waves were not dominated by the left-handed polarity but right-handed waves were often observed.

The latter, higher frequency fluctuations are supposed to be the whistler waves propagating against the solar wind. Sometimes they appear as narrow-banded, monochromatic waves, however, most of them appear as broadband fluctuations with no clear peak frequencies. The power of the fluctuations summed over the frequency range from 1 to 5 Hz again enhanced above the magnetic anomalies, with some exceptions detected far from magnetic anomalies, suggesting that the particles reflected by the lunar surface, as well as those reflected by crustal fields, might play a significant role in generation of the fluctuations.

磁場をもたない小天体と太陽風の相互作用の2次元PICシミュレーション
2-D particle-in-cell simulation on the solar wind interaction with a non-magnetized body
中川朋子,
Tomoko Nakagawa,
第128回地球電磁気・地球惑星圏学会, 沖縄, 沖縄県市町村自治会館, 2010年11月1日.

大規模な固有磁場をもたない月は、吹きつける太陽風の大部分を吸着するため、下流には太陽風プラズマの無い領域「ウェイク」が形成される。近年では「かぐや」衛星によって月による太陽風プロトンの反射も発見され、磁場をもたない天体と太陽風との相互作用が注目を集めている。

Kimura and Nakagawa (2008) は、月によるウェイク形成とその周辺の電場構造を調べるため月を誘電体(完全不導体)と近似し、吸着した電荷は月面上を移動しないという仮定で2次元粒子コードによるシミュレーションを行った。これにより、昼側月面にはプロトン・電子ともに吸着されるのに対し、夜側月面は、太陽風速より熱速度の速い電子だけが到達できるため負に帯電し、昼夜の境界に強い電場が現れることが示された。

この計算では、計算資源の限界から、デバイ長を月半径の4分の1という大きな値にせざるを得なかったため、現実の月に直接応用する事は難しいが、小惑星などのより小さな天体と太陽風との相互作用の理解に役立つことが期待される。

Kimura and Nakagawa (2008) の計算では太陽風磁場が入っていなかったので、今般、太陽風磁場を入れて同様のシミュレーションを行った。太陽風とともに流れる磁場を再現するため、太陽風速度V_swに対し斜め-45度の磁場Bと、E=-V_sw×Bの電場を初期条件として与え、以降は計算によって電場、磁場を求めた。プロトンのラーマー半径が天体の半径(デバイ長の4倍)より小さくなるような強い磁場強度(電子サイクロトロン周波数がプラズマ周波数の12倍)を与えて計算すると、天体の昼夜境界よりやや夜側のあたりから、磁力線よりやや(7-8度)ずれた方向に天体の半径の10倍以上の距離にわたって筋状の電子密度の上昇がみられた。これは、太陽風磁場が月の夜側の負に帯電した領域に達した時、 ポテンシャルを感じて磁力線に沿って流出する電子流(朝側は磁力線に沿って太陽風を遡る方向、夕側は磁力線に沿って太陽風を下る方向)によって説明できる。天体の夜側の帯電による静電ポテンシャルが電子の熱速度程度のため、磁力線に沿って流出する電子流もほぼ電子の熱速度(太陽風速の4倍)程度となっており、これと太陽風バルク速度との合成で、流出電子の筋の方向が決まる。プロトンについてはこのような筋は現れない。磁場強度を弱くしていくと、天体のスケールに対してサイクロトロン半径が大きくなり、磁場の効果がほとんど現れなかった。

The solar wind interaction with a non-magnetized body is studied by using a 2-dimensional electromagnetic full particle simulation. By considering absorption of the plasma particles at the surface of the non-magnetized body, we obtain an intense electric field at the terminator region which is the boundary between the neutral solar-side surface and the negatively-charged, anti-solar side surface bombarded only by electrons with larger thermal speed than the solar wind bulk velocity. In order to simulate the solar wind magnetic field, we introduced the background magnetic field whose direction is -45 degrees from the solar wind flow. For the intense magnetic field case in which the electron cyclotron frequency was 12 times as large as the plasma frequency, there found enhancements of electron density streaking away from the region slightly nightside of the terminator. They are supposed to be the electrons flowing away from non-magnetized body along the magnetic field lines, due to the electric potential on the nightside, negatively charged surface.

かぐや衛星によって月周辺で観測される100秒周期磁場変動の発生機構
Generation mechanism of the 100-second magnetic field variations observed by Kaguya around the moon
中山 研仁, 中川朋子, 高橋太, 綱川秀夫,「かぐや」MAP-LMAG 班
Nakayama, A., T. Nakagawa, F. Takahashi, H. Tsunakawa, KAGUYA/MAP/LMAG Team
第128回地球電磁気・地球惑星圏学会, 沖縄, 沖縄県市町村自治会館, 2010年11月3日.

月が太陽風中にあるとき、月の昼間側ないし昼夜境界付近で、約100 秒周期の磁場変動が「かぐや」衛星搭載の磁力 計(MAP-LMAG) によってしばしば観測されている(Takahashi et al., 2009)。この波は、地球Bow Shock の上流で反射 イオンが起てる波と同じように、月によって反射された粒子が太陽風中のMHD 波とサイクロトロン共鳴したものと考 えられる。それを確かめるため、「かぐや」MAP-LMAG によって2008 年1 月1 日から11 月30 日まで100km 高度で観 測された磁場データ(1 秒平均値)を300 秒ごとに約134 万区間フーリエ変換し、約100 秒周期(モードが2、3)の波が 検出された2327 区間の時間と場所を抽出しリストにした。月との相互作用で発生したと思われる100 秒周期の磁場変動 を検出するため、太陽風磁場中に元々ある変動を除かなければならない。太陽風中の磁場の変動は太陽風速が速い時に 卓越するので、太陽風速度が400km/s 以下の月周辺の磁場変動だけを選んだ。その結果、958 例を月面上にマップする とME 座標で100 秒周期の波の発生位置は磁気異常に集中していた。つまり、100 秒周期の波は月磁気異常で反射され たイオンが起こしていることが分かった。また、SSE 座標では昼夜境界付近から真夜中側にかけて40 度の範囲(太陽天 頂角80-130 度)に78%の集中がみられ、イオンは昼夜境界付近で反射しやすいのではないかと考えられる。

Kaguya/LMAG often detected low-frequency magnetic variation of 100-sec periods when the moon was in the solar wind. The waves are supposed to be generated by the protons reflected by the moon through cyclotron resonance with the MHD waves in the solar wind. The spatial distribution of detection of the low frequency waves were examined by using the 1-sec averaged magnetic field data obtained by Kaguya/LMAG during the period from January 1, 2008 to November 30, 2008 on its orbit 100 km above the lunar surface. The data were Fourier transformed every 300 sec.

We made a list of periods during which the low frequency waves (modes n=2, 3) were dominant. To avoid the magnetic fluctuations originating from the solar wind, we concentrated on the period during which the solar wind speed was less than 400 km/s because the solar wind magnetic fields is less fluctuating in the slow solar wind. As the result, we obtained 958 periods. Plotted on the lunar surface, the locations of the detection of the 100-sec waves concentrated on the magnetic anomalies. It suggests that the waves were generated by the solar wind protons reflected by the magnetic anomalies. Seventy-eight percent of the events were observed at solar zenith angle between 80o- 130o. It would indicate that the solar wind protons are effectively reflected at the terminator.

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